Matthew Guayさんに以下の内容で発表していただきました。
本発表では、はじめに琉球、とくに石垣島の地理、歴史、言語、 そして植民地化の経緯と影響を簡単に紹介した。 なかでも琉球言語保持者が当該言語を地位の低いものと認識してい る状況を示し、精神の植民地化(colonization of the mind)が今なお言語復興の妨げとなっていることを指摘した。 こうした考えをもとに、 琉球語と日本語の間でどのような翻訳が行われているか、 歌の翻訳を事例として検討した。歌を対象とした理由は、 琉球語から日本語、日本語から琉球語、 両方向の翻訳が活発になされているジャンルだからである。 それぞれの翻訳において翻訳者が直面する課題や、 どのような決断をしているかについて分析した結果、 琉球語から日本語への翻訳では多くが “documentary translation” (Nord 1997/2018)の手法を採っているのに対し、 日本語から琉球語への翻訳では、Fanzon (2019) の“near enough singable translation” に類するものが多いと言える。 さらに、琉球語から日本語への “documentary translation” の手法をより詳しく検討することで、 琉球語独自の天候や方向に関する表現のような nonconformist concepts がいかに翻訳されているかを確認し、 翻訳可能性や言語の近代化についても議論した。また、 八重山諸島(石垣市および竹富町)の言語に特有の方位観(民俗方 位) を記録した発表者によるフィールドワークの結果を示すとともに、 民俗方位をあまり使わない( 日本語話者と話すときにはとくにその傾向が強くなる) 理由についてfull speakerおよびrusty speaker両者からの説明を報告した。
(マシューさんの報告を中川さんに訳していただきました)
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